下北沢

On 2009/10/03 by Hidenori Kasagi

【この記事は15年以上前のものです。情報が古い場合があります。】

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小田急線下北沢駅舎デザインに関する地元商店会関係者のブログ発言で、下北沢再開発関連の話題が再燃している。
おそらくは利権や政治などが大きくこの開発を動かしているのだろうが、都心からすこし離れた街の地元利権者は意外に”劣等感”を持ち続けている気がする。ゴチャゴチャした街ではなく青山や六本木みたいな「美しい」街を志向してしまう。古くは「○○銀座」のようなネーミングから、一時期の「うちの街にもスタバができた!」のような都心フォロー志向。数十年前は田舎だった近郊の町だ。東京の中にでも精神的な格差が存在している。わたしが生まれ育った吉祥寺でも、一部ではあるが地元にはそのような志向があることを耳にする。井の頭線でつながっている下北沢もあまり変わらないはずだ。
再開発がなくとも街が発展する上で、地価の上昇にともない大手チェーンでない限り出店できないほどの賃貸保証金が必要になり、中心部はおのずと個人商店が消えていく運命にある。HANAKOなどのメディアにたびたび特集されたり、例年「住みたい街ランキング」上位の吉祥寺でも同じようなことが進行している。メディアが地域の価値を上げることは確かだが、地域のイメージが一人歩きしはじめると、その個性はある時点から反転して薄められていく。不動産的価値に目がくらむことで、なにが街の価値かに自覚的にならなければ、自ら街の魅力は消えていくだろう。
早朝の下北沢を歩いた経験がある。普段、若者でにぎわう下北沢の風景は、歩く人々のサブカル的なファッションで成り立っていると思っていたが、早朝の閑散とした町並みからシモキタの魅力は消えていなかった。道のスケールとカーブ、ゆるやかな傾斜地に立体的に乗り入れる小田急線と井の頭線が生み出す地理的な要素が複雑に絡み合い、歩き回ることの楽しみを生んでいた。その意味でも小田急線の地下化と都道の横断は街に致命的な打撃を与えるのは確かだ。
たとえチェーン店が浸食しようとも、ノスタルジーに陥ることなく、合理の科学ではない複雑の科学かなにかで、下北沢のような街が本来から持つ町並みと、そこに育まれる日常の価値を伝え、街を作る手段はないのだろうか。劣等感と個性は表裏一体なのだから。
下北沢南口商店街の白髭爺さん 吉田くによしのブログ
http://www.yoshi-kuni.jp/index.php?id=09100001
(「長年、私たち地元が 待ちに待った 『もの』 です。」)
以下、反応など
小田急線下北沢駅の新駅舎案が猛反発される理由[絵文録ことのは]
http://www.kotono8.com/2009/10/03shimokitazawa.html
(上記ページの下部に関連リンクが豊富)
「ジャズ喫茶マサコ」閉店 オーナーが語る、下北沢の昔・今・これから 下北沢経済新聞
http://shimokita.keizai.biz/column/10/
(生き字引の説得力と哀愁)
こんな意見も散見できる、、(そのなかでも過激なもの)
下北沢の開発で はてな匿名ダイアリー
http://anond.hatelabo.jp/20091003020851

2 Responses to “下北沢”

  • 小田急開通以前の住人

    > 早朝の下北沢を歩いた経験がある。普段、若者でにぎわう下北沢の風景は、歩く人々のサブカル的なファッションで成り立っていると思っていたが
    ただ遊びに来ているだけの人の浅はかな考えですね。
    演劇の町とかサブカルの聖地と呼ばれるようになったのは、本多劇場グループが来た20年ぐらい前からです。
     この文化も浅いもので、商人は別ですが、住民は必ずしも歓迎していません。商業活動は資本が一番大事ですが、莫大の資金、マスメディアをバックにある本多さんに対抗できるグループが居ませんでした。その結果、今の状況です。
     再開発を利用して、今のシモキタのイメージ壊し、客層が一新して欲しいと住民は思っています。本当に飲んだくれの酔っ払いとか増えて治安が悪くなった。スラム街まっしぐらです。
     私企業が所有する駅舎はバリアフリーであればデザインなんかどうでもいい。ほんの20数年程度の文化?を反映した変なデザインの駅舎にしたら後々恥ずかしい。様々な文化背景の人達が、長く使用するものは無機質なデザインが良い。
     ごちゃごちゃした街は、各商店主が自由にやってきた結果であって、住民たちが望んで出来たものではありません。
    > 小田急線の地下化と都道の横断は街に致命的な打撃を与えるのは確かだ。
    打撃? 地下化を望んでいない住民なんか聞いたこと無い。
    都道に対しては、住んでいる場所、商売人、非商売人によって賛成反対入り組んでいる。この部分だけを見ても浅はかな人と思える。

  • urbaning

    小田急開通以前の住人様
    コメントありがとうございます。
    今回エントリにも貼りましたが下北沢経済新聞の記事や、いただいたコメントの本田劇場の経緯など、下北沢の古くからの移り変わりは、大変興味深く拝見いたしました。
    まさにわたしは「遊びにきているだけの人」でありイメージの下北沢を見ている人間かもしれません。
    ただ下北沢の現在の雰囲気が無くなるとしたら、遊びにくることさえもなくなるのではないかと思います。
    客層を一新したいとのことですが、下北沢に遊びに行き、買い物をし、仕事の打合せもし、お酒もいただくことはありますが、大半の人は飲んだくれたり治安を脅かす人ではありません。
    また誤解があるようですが、サブカルな人々の風景が”なくても”道のスケールや地形、立体感が下北沢を歩き回る楽しみではないか、
    地下化と都道によってそれらが失われると書いたつもりです。そのために打撃という言葉を使いました。賛成している人がいないとは考えておりません。
    記事へのリンクはしていますが駅舎のデザインに関しても、触れてはいません。駅舎のデザインをきっかけに、再開発に対しても様々な人の感情が爆発していることをリンクを通して伝えたかったのです。
    わたしは下北沢の現在の魅力を客観的に伝えるすべはないか、治安の悪化があるのならば、魅力をそのままに街をつくることはできないかという思いです。
    下北沢では完全な部外者ではありますが、わたしの地元にもこのような状況が迫ってくる気配があり、その時に街の魅力を失いたくないという考えと重ね合わせています。
    そのためにもより深くこの問題を見ていこうと考えています。

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