本になったシブヤ

On 2000/09/08 by Hidenori Kasagi

【この記事は23年以上前のものです。情報が古い場合があります。】

気がつけば9月、、 夏を満喫できなかった分、一足先に秋の準備をしましょう。 ということで、今回 のスクラップアンドビルドは、読書の秋。
もう「渋谷系」という言葉は死語らしいけど、、今回取り上げるのは2冊とも1997年に出版された本です。ちょっと古いかもしれないけど、渋谷の見えない風 景をうまく描き出している2冊です。

「シブヤ系 対 カマタ系」
馬場広信/ぶんか社 ISBN4-8211-0573-X
“試験にでるコギャル
蒲田が、シブヤ系トレンドの正体だった!
徹底した検証と分析で浮かび上がる新説……。
「TOKYOコギャル文化のルーツが、
江戸時代からの土地の歴史にあった!」”

リアルなようで胡散臭い、胡散臭いようでリアルなサブカル分析本。シブヤを単なる場所にとどめず、その沿線にひろがる、世田ヶ谷の鎌田、大田区の蒲田にまで視点を広げて分析している。そこで浮かび上がるのは、江戸時代から続く、人間と資本の戦場であった渋谷の姿である。

「インディヴィジュアル・プロジェクション」
阿部和重/新潮社  ISBN4-10-418001-7

帯にも記されているのだけど、「渋谷は今、戦争状態みたいだ!」という有名な一節がある。主人公は映画技師という日常の顔をもちつつ訓練されたスパイでもある。リアル?な渋谷の風俗を描きつつ、暴力団との争いに巻き込まれ、しまいには自分の人格さえも揺らいでいく。
スパイとして渋谷の風景に溶け込もうとする彼の格好は、ごく普通の渋谷系だ。そこで気付くのが、この物語が単なる普通 の人の思い込み(インディヴィジュアル・プロジェクション)ではないかということだ。逆に言えば渋谷系をはじめとする、アオハラ地域が発信してきたファッションが、単なる差異化ではなく、私たちが誰でもない誰かになるためのカモフラージュスーツであるように思えてきてしまう。

青山原宿渋谷のポータルサイト「アオハラ」での連載「スクラップ&ビルド」「アーバンピクニック」に掲載されていた文章です。
*アオハラ、aohara及びアオハラロゴは(株)アジアン カルチャー オーガナイズさんの商標です。

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