MoMA Uneven Growth: Tactical Urbanisms for Expanding Megacities
【この記事は9年以上前のものです。情報が古い場合があります。】
低成長時代に直面した巨大都市で実践されているボトムアップ的な都市計画を、世界の6つの地域からピックアップするMOMAの建築展。副題に”Tactical Urbanism”とあるように20世紀の「戦略的」な都市計画に代わる「戦術的」なプロジェクトが集められている。戦略/戦術は80年代にミシェル・ド・セルトーの提唱した日常空間に対する概念である。近年は都市計画を意味するurbanismと合わせて”Tactical Urbanism”というように、欧米の都市計画分野からも使用されるようになってきた。都市計画への批判的な言説だったものが、実際の街へと実装レベルになってきたと言えるだろう。”Place Making”と合わせて今後の都市・建築に関わる重要なキーワードとなっている。
特徴としては、自動車に占有されていた場所を取り返すために道路空間を使用したり、空き地のような都市の置き去りにされた空間を対象にしているものが目立つ。またそこでは市民参加やDIYを通して物事が作られている。よって取り上げられているプロジェクトは、MoMAの展覧会にしては、どれも非スペクタクルな様相を示している。一方でTactical urbanismという言葉が使われる以前(*1)に行われた類似の展覧会”Tools for Actions”(2008 カナダ建築センター)や”Post it City”(2008 バルセロナ)ともよく似ている。以前はアクテヴィズムの延長線上に位置していたものが、低成長経済という背景を与えられたことと、計画への実利的な手法になりつつあることが今回の展覧会の特徴だろうか。以上のことから派手さや真新しさには欠けるが、これまでデコンストラクション展やライトコンストラクション展など、建築史の重要なフェーズを描き出してきたMOMAが”Tactical Urbanism”取り上げるということは重要な意味を示している。
November 22, 2014–May 10, 2015
*1 インターネット上で使われ始めたのは2010年頃である。https://twitter.com/search?f=realtime&q=%22tactical%20urbanism%22%20since%3A2000-01-01%20until%3A2011-01-01&src=typd