町歩き+コンビニ巡りのすすめ – G.A.W.

On 2009/08/23 by Urbaning

【この記事は15年以上前のものです。情報が古い場合があります。】

コンビニから見える街のこと。コンビニの店長を務める人のブログ。
http://d.hatena.ne.jp/nakamurabashi/20090822/1250914963(現存せず)

 俺が探しているのは「人々の生活」の痕跡のようなものです。

 コンビニってのは、一説には商圏が半径500メートルなんていわれるくらい地域に密着した小売形態です。国道沿いにあるような道ならともかく、住宅のなかにある店なんて、ほんとに毎日のように同じ人が来たりする。つまりコンビニには「人々が日常の生活のなかで求めるものがある」ということなんです。

コンビニの分類

 まず駅前立地。言葉どおりですね。特徴は通過客が多いこと。駅の近くにどんな施設があるのかでだいぶ品揃えは変わりますが、基本的には「これから仕事や学校に向かう人」と「帰ってきた人」が寄る店です。家からの最寄ではないことが多いため、あまり重たいものは持ちたくないですから、客単価は相当に低いのが一般的です。つまり、客数で稼ぐわけです。

 次に、ロードサイド立地。主に車の客を相手にする店です。特徴としては職業ドライバーの利用が多いこと。そして週末には行楽客の移動で売上がどっかーんと跳ね上がる店が多いこと。まあ、これも場所によりですけどね。一般的には荷物の重さを気にしない人が多いため、客単価は高めです。

 住宅立地。これも言葉どおりです。住宅のなかにあって、地域に住んでる人が「あ、コンビニ行こう」と思ったときに家から出て利用する店です。客単価は高め、固定客比率が高い、スーパー的な商材がよく売れて、逆に弁当類なんかは家で作る人が多いためあまり売れない、などの特徴があります。

 オフィス立地。またまた読んで字のごとく。特徴は、いうまでもなく朝昼のすさまじいラッシュ。これがないと成立しません。必然的におにぎりとサンドイッチ、菓子パンなんかがとんでもない量売れていき、反面、スナック菓子や缶詰なんかは置いてあるだけって感じです。

 最後に「特殊立地」として括られるもの。たとえば大きな病院の前にあるコンビニ。工場街のなかにある店。こうした特殊な立地では、客層が偏るため、品揃えも偏っていることが多いです。かつて横浜最大のスラム街のそばにあったコンビニなんかでは、客層のかなりの部分が、都市における路上生活のスペシャリストだったため、品揃えがえらいピーキーなことになってました。具体的には安くてカロリーの高いもの、大福だとかバナナだとかが意味わからないくらい置いてある。あとは白牛乳。彼ら牛乳大好きなんですね。きっとえいようあるからだと思います。

 俺は町を歩くときに、そこにはどんな人が住んでいるのか、どれくらい住んでいるのかを妄想するのが大変に好きです。昔ながらの長屋っぽい家がびっしりと建て込んでいて、エアコンの室外機なんかがアクロバティックな設置のされかたをされているような家が多かったりすると、そこは高齢化率が高いことが推測されます。小奇麗だけど火事に弱そうなプレハブっぽい賃貸住宅が多い場合は独身者や夫婦のみの所帯、一戸建てが多ければそこそこ世帯所得の高い人たち。そうしたものと、あとは道路ですね。整備されているのか、広いのか狭いのか。無秩序に交差していたりすると、戦前からの町割りがそのまま生きていることも考えられます。

 そうした予備知識を持ったうえで、コンビニに入るんです。

 まず見るのは弁当売場。納品時間の関係もあるんで一概には言えないですが、ここに大量の商品がある場合、まずその店は売上が高いといえます。売上が高いっていうとやっぱり人通りの多い駅前なんかを想像するわけなんですけど、これがあんがいそうでもなくて、住宅のなかにぽつんと建ってる床なんかすっげえ汚ねえ古くせえコンビニで、とんでもない量の弁当が積んであったりするんですよ。

 あとは惣菜あたりですね。焼き鳥とか餃子とかの。これが多い店は酒と一緒に商品を買ってく人が多い傾向があります。これから家に帰る人と、家から出てくる人ですね。考えてみれば、オフィスのまんなかにあるコンビニで惣菜の麻婆豆腐とか買う人はあんまりいないわけです。

 あと、客層がもっとも顕著に出るのが雑誌売場。これがねー、おもしろいくらい違うんですよ。前提として雑誌の発売日がある程度頭に入ってることが必要ですけど、たとえば漫画ゴラク。これ、ブルーカラーの労働者の多い立地ではやたら売れるんですね。逆に、あたりまえの話ですけど、大学生相手にしてるコンビニで売れることはない。もしコンビニに入ったのが木曜日だったら、週刊新潮と文春の部数に注目してください。これが多い店は確実に年寄り率高いです。新潮文春が10部以上だったら、昼前あたりに老人ラッシュが起きてる可能性が高いですね。

 雑誌についてはまだまだおもしろい話ができそうなんですが、細かくなりすぎるので割愛します。つまり、雑誌というのは最初から客層を特定しているものですから、発売日あたりの入荷部数がわかるときに売場を見れば、どんな客層が来るのかよくわかる。つまりは、地域にどんな人が住んでいるのか、というイメージが持てるんですよ。

 さて、売場の外周を回ったので、真ん中の棚のほうも見てみましょう。俺がよく見るのは猫えさです。これがおもしろいんだ。人口じゃなくて猫口がわかるの。ふつうは猫えさって2段も棚使ってれば上出来って部類なんですが、たまにとんでもない在庫持ってる店があるんですね。うちの店ですけど。古い住宅街で外飼いの猫が多い地域でよくこういう現象が起こります。そういう店では反面、猫砂があんまり売れない。猫そのへんでうんこしますから。高級な犬えさが多い店の周辺は平均所得高いですよ。所得が低いか、あるいは高齢率が上がるほど犬は雑種が増えて、外飼いになるんですね。そういう場合はドライフードか残飯もらってる。つまり、高級な犬えさは、室内飼いの小型犬がメインで食べるんです。

 あとは……そうだなあ、男性用剃刀。これなんかもおもしろい。貝印の安い剃刀が大量に置いてある店は、やっぱり昔ながらの古い住宅街。じーさんとかが剃刀切らして銭湯行く前に寄ったりとかね。

 アイスの品揃えなんかもずいぶん特徴が出ますよ。車客や通過するだけの一見さんが多い店だと、バータイプが売れて、家でアイス食べる人が多い店だとカップタイプが出る。アイス売場の半分をバータイプが占めている店は、相当に一見さんが多い店です。

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