グルーポン、都市イベント企画のサイドツアーを買収
【この記事は11年以上前のものです。情報が古い場合があります。】
「クーポン共同購入サイト大手の米グルーポンが、米主要都市でのイベントなどをインターネット経由で提供するサイドツアーを買収した。」というWSJのニュース。グルーポンは日本でも有名、どちらかというと不祥事のニュースで話題になったが、アメリカでは日本円にして300億円を売り上げる企業。そんな会社が買収した「サイドツアー社」が気になる。
記事にはこうある。
2011年に設立されたサイドツアーは、シカゴ、ニューヨーク、フィラデルフィア、ワシントンで催されるユニークなイベントを企画している。イベントはシェフ、アーティスト、五輪メダリストといった専門家が主催し、平均参加者数は12人と非常に小規模。テーマは料理や飲料、建築などと多岐にわたる。現在、イベント主催者は400人を超え、イベント数も500件を上回っている。
ここで注目したいのは「平均参加者数は12人と非常に小規模」という部分。大企業が買収するのだからどれだけマスを相手にしているのかと思えば、個々の単位は意外にこじんまりしている。
そこでもう少しサイドツアーについて調べてみると、二通りの見方があるようだ。ひとつは旅行ツアーとしての見方。いわゆるツーリズムのように、観光ではなく、その土地の日常を体験する旅行サービス。もう一つが、その体験を旅行者というよりは、もう少し身近な地域の「教室」としてとらえる教育としてのサービス。
「世界中の旅の達人を探せる旅行シェアが人気 -イノーバ・ブログ」
「スキルを持つ人が新しい経験を提供する「sidetour」-こつこつスタートアップ企業まとめ」
前者にはサイドツアーだけでなくいくつかのサイトが紹介されており、そのなかで都市空間や都市生活にかかわるツアーをピックアップしてみた。
・サーカスのトレーニングinラスベガス(1時間 100ドル)
・化粧とアクセサリーツアーinニューヨークシティ(3時間 250ドル)
・プロの写真家と街中で写真ワークショップinイスタンブール(3日間 300ユーロ およそ367ドル)
・元警察官とレッドライト地区ツアーinアムステルダム(1時間半 12.5ユーロ)
・ストリートアートツアーandグラフィティのデモンストレーションinクイーンズ、ロングアイランド(1時間半 35ドル)
・食用植物の採取inブルックリン(2時間 20ドル)
・都会の養蜂見学inブルックリン(3時間 50ドル)
・肉屋の仕事体験inグリニッチ・ヴィレッジ(3時間 45ドル)
・人気ミュージシャンとクラブで対話(1時間半 200ドル)
・クイーンズ区 深夜ストリートフード食べ歩き(3時間 48ドル)
以前このブログでも取り上げたホームレスが案内する「観光ツアー」とも通ずる興味深い体験がたくさんあるようだ。
つまり旅行にせよ、教育にせよ、作られた物や用意された物より、目の前に広がる現実と日常を明るみにすることで価値になるということだ。
日本では「シブヤ大学」や「にしがわ大学」の活動が似ているように見える。ソーシャル系大学という呼び方もあるようだ。
都市空間と日常に埋もれた既存の物事に視点を与え、価値を生み出すやり方は、膨大な資金を必要としない。よって観光開発や都市開発のようなものと違って、小さな集団が思い思いの価値を社会に反映できる良い方法に成長してきたところであった。今回のサイドツアー買収のように大手資本がこのような方法論に着目している事態は、それらに一定の評価を得たことがわかるとともに、利益の最大化を目指すとマス化することで陳腐化する可能性もある。
なによりもその価値は平均12人という小規模集団を単位にしている所にあるはずである。
グルーポン、都市イベント企画のサイドツアーを買収 – WSJ.com.